施工について 2024.03.25
3月も終盤になりましたが、
冬に逆戻りしたかのように
寒い雨模様の日が多いこの頃です。
皆様は体調を崩されたりしていませんか?
早く暖かな春らしい陽気に
ならないかなぁと思いつつ、
花粉症の私は別の憂鬱も待っており、
相変わらずマスクが手放せない毎日です。
そんな中、先日たまたま車を止めた
コインパーキングの隣に、
目を引く建物が建っていました。
外観からだけですがよくよく見てみると、
とても歴史を感じる素敵な建物だったので、
ご紹介したいと思います。
立札によると、国登録有形文化財の
旧後藤医院鵠沼分院とのことでした。
1933年に建てられたものとのことで、
約90年経っていることになります。
もちろん改修は施されていると思いますが、
とても美しく保たれているなぁと
感心致しました。
銅板の瓦棒葺き入母屋屋根という
和の要素と、
出窓や杉材の下見板張りの外壁という
洋の要素が混在する、
和洋折衷なデザインです。
設計者は不明とのことですが、
当時の最先端の建築様式と
建築工学を伝統的な職人の手仕事で
造っていることが各所に見て取れます。
妻面には小屋裏換気用の
開閉式の通気窓があり、
棟には3カ所の腰屋根まで
設えられています。
入母屋屋根の妻換気は
養蚕のための小屋裏利用や
囲炉裏の排気など、
伝統的な手法ですが、
腰屋根まで設えて
室内の換気や排気、
排湿に配慮しているのは
珍しいと思います。
玄関には大きな軒下が別屋根として
設けられ、雨天時の出入りも
考慮されているのが分かります。
整然とした美しい木組みで
構成されています。
柱脚の納まりは
寺社建築と似たものですが、
丁寧な根巻板金の銅板に
さりげない彫刻が施されています。
妻面の出窓の配置も、
あえてシンメトリーにしてないのでは
ないかと思いました。
西洋建築は、
基本的にファサード面を
シンメトリーにデザインしますが、
日本建築ではあえてそのバランスを
崩す配置をとりますよね。
床の間しかり、
古民家や町家のファサードしかり。
そしてこの窓、
木製で設えた出窓というだけで
手の込んだものですが、
日本の古建築では珍しい
上げ下げ窓になっています。
このあたりも、
かなり洋風を意識していそうです。
そしてよく見るとこの出窓の一部にも
換気口が設えられていることがわかります。
ディテールもきちんと検討されていて、
雨を除けるためにちゃんと軒先を伸ばし、
換気口から雨が入らない配慮がされています。
洋風なデザインを取り入れながらも
日本の環境への対応も怠っていません。
結果、それらの配慮が美しいデザインに
繋がっていると感じます。
また、その施工技術にも目を見張りますね。
2連の上げ下げ窓の出窓を1体に造るなど、
現代でもハードルが高い設計です。
雨掛かりする木部には、
外へ水が流れるよう面が
とってあることも分かります。
こちらはおそらくトイレなどの
常に換気をしたい部屋で、
同じ面に地窓と高窓を配置し、
温度差換気で空気が自然に流れるように
配慮した設計だと思います。
よく見ると、どちらの窓上にも
雨除けの庇が設えられています。
(地窓にもついています‼)
雨の日でも開けておけるように
なっているのですね。
今回、たまたま見つけた名建築でしたが、
私なりの目線で紹介させて頂きました。
これまでも和洋を問わず
たくさんの名建築を見てきましたが、
まだまだ知らないものが
たくさんあることに気づきました。
それも、こんな身近にさりげなく。。。
そしていつも思うことですが、
私が感銘を受ける建物、
特に住宅などの小建築では、
いかに設計者が
住まい手に気配りをしたか、
周辺環境に寄り添えたか、
心地よさをつくり出せたか。。。
というところに
共通点がある気がしています。
まだまだ学ぶべきことが
たくさんあることを再認識しました。
大坂
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