平野 聡史 2026.09.07
こんにちは、設計の平野です。
夜も寝苦しい暑さは過ぎ、
心地よい虫のささやき声を聴きながら
眠りにつけるようになりました。
一年で一番好きな時期です。
さて、
今回は築約35年のRC壁式構造の
マンションのリノベーション事例です。
基礎知識として、
RC構造をざっくりわけると2種類に
分類できます。
【ラーメン構造】
柱と梁で建物を支える構造。
間仕切り壁は構造体ではないので、
間取りの変更が比較的しやすい。
【壁式構造】
コンクリートの壁で建物を支える構造。
間仕切り壁の一部もコンクリート造のため、
間取り変更は制限が大きい。
今回のお話は後者の【壁式構造】です。
施主さまはこのマンションを
新築時に購入され、長い間
ご家族と過ごされてきた住まい。
巣立っていったお子さまご家族の、
仲の良さそうなお写真が
さりげなく飾られていたのが
印象に残っています。
この度のきっかけは、
給排水配管設備の老朽化に伴い、
各世帯に専有部分の配管を
順次やり替えをするよう、
管理組合から求められていたこと。
併せて、
北に面した個室2部屋の寒さ・結露の
お悩みを解消したい。
ということから始り、
終の棲家としてゆっくりと快適に
過ごせる住まいにしたい、
というご希望でした。
RC造の集合住宅においては、
必ず動かせないものがあります。
一言でいうと「共有部(共用部)」
といいますが、
具体的には
「構造体」
「窓(玄関扉含む)」
「共用排水タテ管」
など。
ある意味、
出来ること・出来ないことが
はっきりしている制限のなかで、
いかに使いやすく、居心地の良い
空間に再構築できるか、
が問われる内容です。
では解体後の状況から、



専用部分の給排水管は全てやりかえるため、
床は下地から全て撤去。
給排水配管の交換をし、防音規定を満たす
置床でやりかえます。
配線・配管を通すため、
壊せる壁や天井も撤去します。
写真のように、間仕切り壁の一部も
コンクリートで造られているのが
壁式構造です。
主要テーマのひとつである
北面のお部屋は、
外気に面する壁面の内側に
フカシ壁を立てて断熱材を充填し、
断熱性を高める計画。
もちろん窓には内窓設置が必須です。
断熱施工


断熱を入れたフカシ壁は、
天井面にも少し折り返すことで
熱橋(非断熱部分に集中して
熱の出入りが起こること)による
結露への対策になります。
WIC

上記施工をし、北側の2部屋は
寝室とWICとして改装。
WICと寝室の間仕切り壁は
上部を開口にして、
圧迫感を軽減しました。
リビング・ダイニングと隣接した和室、
という配置関係は既存のままですが、
和室は小上がりにして空間に
変化をつけました。
LDと和室


窓際は、ご趣味の観葉植物を置けるよう
床の仕上げもフロアタイルにして、
インナーテラス的なスペースに。
ハンギングバーも設置しました。
和室の一角は、小上がりにした
床の段差を利用した堀座卓式の
文机スペース。
和室

障子は既存のものを再利用しました。
もともとLDの天井はRCの躯体直に
クロス貼りの仕上げでしたが、
その下に天井を組んで
ダウンライトを埋め込める
スペースをつくり、
ヘムの板張りで仕上げました。
和室からLDを見る

ぐっと落ち着き感のある空間になりました。
キッチン

キッチンには共用部の吹抜けに面した
ジャロジーの窓があります。
そこから隙間風に加えて、
他世帯の声が響き渡る(笑)、とのことで
音と寒さ対策でここにも断熱と内窓を
施工しています。
キッチン

水まわりは大幅に位置は変更せず、
収納や設えを整えました。
洗面

定番の洗面台。
ランドリー

洗濯機周りは収納棚とアイロンかけ等の
作業カウンター、物干しバーなどを設置した
機能的なつくりに改装。
浴室は10年ほど前に
リフォーム済みでしたが、
今回全ての給排水管をやり替える要件のため、
構造上どうしても解体してやり替える
必要がありました。
既存のユニットをバラして
再設置する方法も考えましたが、
保管場所の問題や、施工費も
それなりにかかります。
今回はユニットバスを新しくする
選択をしました。
ただ、10年前とは思えないほど
キレイな状態だったので、
聞くと奥様がよくお手入れを
されてきたとのこと。
全てを交換するのは忍びなく、
せめてミラーだけは・・・と思い、
既存のミラーを丁寧に外して再設置しました。
(既設と同じメーカーのユニットバスなので可能でした)
交換後の浴室

このミラー、どうみても新品に見えますよね。
奥様の日ごろのお掃除の賜物です。
わが家のうろこ汚れだらけのミラーとは
大違いだな!
あ、お風呂掃除は私が担当です(笑)
・・・と話しが逸れましたが、
今回は壁式構造のマンションを、
「自然素材の優しい空気感に
包まれながら過ごせる住まいに。」
というフルリノベの実例でした。
マンションは特に、
既存の構造や給排水状況、
防音規定、断熱的な弱点などを
よく理解した上で、
意匠・機能・性能のバランスが
取れた計画をすることが大切です。
見えるところも見えないところも
しっかりと。
それではまた。
平野
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